2012年 06月 06日 ( 1 )

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風のささやき

懸賞 2012年 06月 06日 懸賞

風のささやき

春夏秋冬、風はいつでもどこでも吹いている。
そして静かに、私たちに何かを語りかけている。

――浅春――
春の予感を察した生き物や植物達が、
一斉に命を芽吹く。
命の始まる季節。
菜の花畑の中で、彼女は微笑んでいた。

――暖春――
ふわりふわりと揺れる、桃色の桜の木の下に、
彼女はいた。
その姿にひらひらと舞い降りる優しい花びら。
吹き渡るは、春色の風。

――初夏――
空に負けずと美しい新緑の木々に囲まれて、
彼女はそこにいた。
夏の日差しが強くなり、海や川、山では賑やかな笑い声が響く。
微笑ましいその光景に、彼女は笑顔をこぼす。

――盛夏――
青い空と白い入道雲。
轟く音は、セミの鳴き声。
そんな空間の中、微かに小鳥のさえずりが聴こえる。
耳を澄ますと、鳥と同時に風がそよそよとささやいていた。

――爽秋――
夏の暑さに終止符を打ち、秋がやって来る。
芸術の秋、食欲の秋、そして読書の秋。
天高く馬肥える。
美しい秋。

――深秋――
稲刈りも終え秋も深まると、遠くの山々が色づき始める。
風に揺られて木の葉が散る。
枯葉は、秋の香りを漂わせた。

――雪中――
北風と共に白雪が舞う。
土の中では様々な生き物が、
寒さに耐えて春が来るのを待っている。
生まれたばかりの真っ白な赤ちゃん雪に、
彼女は小さな足跡を残した。

…この場所が好きだ。
彼女はいつでもそこにいる。
そして風のささやく声を感じている。
風はいつでも、絶えることなく彼女を見守っている。


…これは私が高校2年生の時の入院の際書いた文章です。
他にも色々書いていたのですが、
表紙を付け一枚の冊子にして主治医の先生に渡しました。
しばらくナースステーションのテーブルの上に置かれていて、
看護師さんたちも読んだりしていたみたいです。
少し恥ずかしいけれど、ここにも載せました。
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by xxxRingxxx | 2012-06-06 22:16 | 時には昔の話を | Comments(2)